その石はトルコの大地に眠る

それは、トルコを出国する日の事だった。

アンカラからイスタンブールに向けて走るバスの中で、私は猛烈な体調不良に見舞われていた。腹部の不快感に偏頭痛。身体中に脂汗が流れ肩で息をするような状態。ハッキリ言って相当マズイぞ、この感じ・・・。

アンカラを出発してから2時間程してトイレ休憩の為に立ち寄ったドライブインで半ばフラフラになりながらバスを降りる。口当たりの良さそうなフルーツジュース(トルコのジュースは結構な甘さだ・・・)を買い店の外に出るとドネルケバブが売られていたのだが、羊肉臭に思わずクラクラしてしまう。うゎ・・・ダメだ・・・煙草吸おう・・・。

朦朧とした頭で煙草を吸いバスに戻る。
ドライブインを後にしイスタンブールに向け出発してから10分ほど経った頃からだろうか。先程迄の体調不良がそれこそ嘘のように良くなって来たではないか!何と言うか、「良からぬモノ」が身体からすうっと出て行ったとでも言うか。

一体何だったんだろう・・・と思いながら右手の中指に目を遣ると・・・。
即座に凍りついた私は心の中で悲鳴をあげた。何故ならば、お守りとして友人から借りて来た指輪の石が無くなっていたのだ。余りのショックに言葉が出ない。今朝ホテルを出る時は間違いなく石は指輪の真ん中で輝いていた。我に返って座席周辺を探すものの見当たらない。さっきのドライブインで落ちてしまったのだろうか・・・。とにかく悲しい・・・。指輪も元気だって昨日友人にメールしたのに・・・。

でも、もしかすると・・・。
あんなに体調が悪かったのが、嘘のように良くなるなんて・・・。
嗚呼・・・指輪の石は私の身代わりになって消えてしまったんだろうか・・・(涙)悲しいけれども、こうしてまた車窓からトルコの大地を眺められるようになったのは指輪のお陰。その事に感謝して、残り少ない旅を全身で感じたい。

成田に到着して直ぐに、友人に指輪の事を報告すると、友人は「指輪が役に立ってくれて良かった」と言ってくれた。石が身代わりになってくれて、私は旅を続ける事が出来た。

改めて思う。
ここを目にして下さる方々や、いろいろな人たちの支えがあってこそ、私は旅をする事が出来るんだ、と。

写真や音たちの整理が終ったら(いつになる事やら・・・笑)トルコの旅の事を書いて行きたいと思っています(羊肉臭を思い出さないように・・・苦笑)