2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

送られる事の無かった手紙

私の手許に送られる事の無かった一通の手紙がある。 送る事が出来なくなってしまったその手紙は、友人Sが旅立つほんの数日前にS宛に書いたものだった。手紙を投函する前にSが旅立ってしまったのだ。この一月余り、私はその手紙が入れられた封筒を敢えて手に…

切ない味の坦坦麺

それは私がまだ東京に住んでいた頃の事だった。 昼時の五反田。「時間も無いし、取り敢えずココでいいや」と入った坦坦麺の店でその歌は流れていた。猛烈に歌謡曲調の旋律。どことなく悲しげな内容の歌詞。それは、どうにも70年代の歌謡曲。坦坦麺の店で何…

明け方に見た夢

それは、おそらく明け方だったのだろうと思う。友人Sの夢を見た。 会議のような風景。手振りを加えて笑顔で話すS。話し終えてSが目を瞑った瞬間、Sの顔が棺の中の顔に変わったところでガッ!と目が覚めた。部屋には鈍く弱い光が射していた。友人Sが旅立って…

枯れ果てているとしても

無職となった私の一日は、何ともシンプルなものになった。睡眠。食事。考え事。ぼーっとする。お経を聞く。時々般若心経を写経。はてなに日記を書く。 な、何か・・・枯れ果ててると言えなくも無いような・・・(汗)今は真剣に仕事を探していない。 自分は…

「生き方」「逝き方」そして、問いの答え

これ迄の人生で友人を亡くした経験が無かった私にとって、友人Sの死は余りにもショックが大き過ぎる出来事だった。去年の秋スープカレーの大盛り食べてたSが、冬には入院、闘病生活。そして、春にこの世の何処にもいなくなってしまうなんて・・・。ガンが判…

その人と縁のある文字

御歳92歳になる母方の祖母の家の仏壇には、戒名の一部が赤字で書かれた位牌が収められている。赤字で書かれているのは祖母の戒名。戒名は生前に授かる事も出来る。位牌の赤字は、故人ではない事を表している。お墓参りに行った時に、墓碑などが赤字だった…

壊れてます。ええ、壊れてますとも〜!

寺院で働いていた一年の間には、何気に色々な出来事があった。昨年の冬、以前長く勤務していた会社が今年3月で廃業する事を知る。 退社する時、自分としては”持って3年”と予想していたので別段驚きはしなかったし、昨年の春に大々的なリストラをした事も聞…

地獄の沙汰も・・・

寺院での仕事は全般的にまったりしたものだったけれども、仕事内容はと言うと、結構シビアなものが多かった。葬儀、法要、月参り、納骨、各種供養、等々・・・どれも皆、基本的にはお金(お布施)抜きでは語れないものばかり。全ての寺院がそうなのかは判り…

はてな空白の一年間に

はてな空白の一年間。 何をしておりましたかと言うと、寺院で働いておりました。 出家して尼僧さんに成った、とか修行していた、とかでは無く普通〜に寺院の職員として。元々寺院を訪ねたり、宿坊に泊まったりする事が好きだった故、採用が決まった時は「こ…

それが悲しみの刹那だとしても

ここに友人Sの旅立ちを見送った自分の気持ちを書き始めて、フと気が付けば5月が終わり6月になっていた。陰鬱とした梅雨空のように、ひたひたと泣きながらも気持ちを文字に、言葉にする事によって、感情が整理整頓されて行くのが解る反面、悲しい気持ちが癒…

永遠に生き続けるもの

丁度二週間前。友人Sのお通夜にて。 祭壇の横には、Sの作品の写真とメッセージが持ち帰り用として置かれていた。 この写真が、Sが北欧で製作した最後の作品になってしまったのか・・・。と思うと悲しみが深まる。友人Sは数年来、毎年冬になると北欧で作品を…

大切な何かが指の隙間からこぼれ落ちた日

その人が、少しずつ、少しずつ、その人では無くなって行く。 その人の姿、かたちはそこに在るんだけれども、その人の意識がそこから離れて行くような感じ、とでも言うのか。その「感じ」を感じ取ってしまった時、人は途方も無い悲しみと絶望感に襲われる。「…