2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

悟り、無、在るがまま。それは説明のつかない何か。

「仕事断った・・・うん・・・全部、断った・・・」と呟いた友人Sの声は、果てしない哀しみを孕んだような声に感じた。 無言で頷きながら私は言う「今は体調回復に専念して、体調が良くなったらまた(仕事を)するといいよ」と。この時、Sは三種類目の抗がん…

それは、きっと笑顔だった。

「お互いに歳とって、おじいちゃん、おばあちゃんになったら、その時は縁側でのんびりお茶でも飲もう」と言う友人Mと私に向かって、「アハハ!何だよーそれ」と口を思いっきり開けて屈託の無い笑顔で答える友人S。思えば、Sは何時だって笑顔の人だった。 Sは…

どこか空よりももっと遠いところ

「今日は外が白いんだね」と言って窓の外に視線を移すS。 「朝から雪が降ったり止んだりしてるんだよ。もう、すっかり春の筈なのにね」と白い理由を答える私。「そっか」と言って再び窓の外を見るSの瞳は、どこか空よりも、もっと遠いところを見ているようで…

そこにいてくれるだけで。

「だって、ハズ言ったじゃん!コレがあればいいから、って!!!言ったじゃん!!!」 大学病院のスタバで、Sは強い口調でそう言うとアドレス部分をビリビリと千切って「ほらっ!」と言って私に差し出した。「ごめん・・・私の言い方が良くなかったよね・・…

友情、愛情を意味するサンスクリット語の音写

昨日は友人Sの初七日だった。 Sが永眠して今日で一週間。時が几帳面に時間を刻む分だけ、思い出や悲しい記憶もまた刻まれて行く。Sとの最期のお別れの時。 たくさんの花が供えられたSの棺を参列者が見守る中、とうとうその時はやって来た。棺に蓋が被せられ…

大きな蜘蛛の巣をぼーっと一人で見ていた日。

私が子供だった頃、父が「今日はおばあちゃんに会いに行こう」と言って向かう先が、どう言うワケか父の実家ではない事が子供心に不思議でならなかった。祖母に会うのは、いつだって病院の寒々しい病室で、祖母が私達を出迎えるのは決まってベッドの上だった…

遺影に向かって心の中で呟いた言葉

今日の夕刻、友人が自宅に大きな封筒を届けてくれた。友人は「折り曲げたくないので・・・」と、わざわざ母に手渡してくれたらしい。友人が届けてくれたのは、数年前の新聞に掲載されたSのインタビュー記事だった。無邪気な悪戯っ子みたいな笑顔のSの写真を…

そして、涙は凍りついた心と身体を一気に溶かした。

棺に静かに横たわる友人Sの顔を見た瞬間、変わり果てた姿に心と身体が凍りつく。そして次の瞬間、怒涛の如く溢れ出す涙が凍りついた心と身体を一気に溶かした。「(彫刻家として、だと思う)未だやりたい事があるんだ。だから、あとせめて5年は生きたかった…

残酷な夜明け、旅立ちの朝。

午前4時。旭川駅前のホテルの部屋で、私は夜が明けて行く様をぼんやりと見ていた。どんな夜にも必ず朝はやって来る。明けない夜はない。 でも、こんな気持ちで迎える朝は、その静寂も何もかもが残酷に思えて仕方ない。前日の夕刻。私と友人Mは旭川駅に降り…