そこにいてくれるだけで。

「だって、ハズ言ったじゃん!コレがあればいいから、って!!!言ったじゃん!!!」
大学病院のスタバで、Sは強い口調でそう言うとアドレス部分をビリビリと千切って「ほらっ!」と言って私に差し出した。

「ごめん・・・私の言い方が良くなかったよね・・・ごめん」
「コレでいいんでしょ!コレでいいって言ったのハズなんじゃないの!!」
Sの怒りは収まらない。Sを気遣って発したつもりの言葉が、Sを怒らせてしまうなんて・・・。

Sに病室迄今手許にあるのと同じ内容の資料を取りに行ってもらうのは申し訳ないから、アドレスさえ判れば私が調べるよ、大丈夫だよ、って言いたかっただけのに・・・。決してSの事を否定したワケではないのに・・・。

そして、不機嫌そうにSは言う「早くソレ飲み終えて」と。
さっさと帰って、って事ね・・・。何、この追い討ち状態は・・・。それに、こんなに怒ったSを見たのは初めてだよ・・・。

「直ぐに飲み終わるから、部屋(病室)に資料取りに行こう」と言ったものの、Sは無言・・・。飲み終える迄の間もそっぽを向かれたまま無言・・・。エレベーターの中でようやくSが口を開く「ハズ言ったじゃん・・・」と。あああ・・・もう・・・。「いや、だから、ごめん・・・。全部悪いの私だから。だから、ごめん、って」次の瞬間Sの口から「あーうるさい」と言う言葉が・・・。同乗していたおじさん、思わずビクッとしていたよ・・・。

Sを気遣ったつもりの言葉が、こんな展開になるなんて・・・。
「うるさい」言われ、相当落ち込んで大学病院を後にした自分・・・。邪魔者扱いされたような気がして、駅までの道程で思わず泣きそうになる始末・・・。

その夜。
Sから「今日はなんだかごめんなさい。もう寝ますね。おやすみなさい。」とメールが来ていた。その時、テレビから聴こえて来た歌が何だか心にズキっと来た。

その歌が何だか凄く気になって調べたみたら、ラムジのユメオイビトと言う曲だった。サビの部分は「ありがとう、今、君がいる。それだけで僕はいいんだよ」
と言う歌詞。たとえ「うるさい」と言われようが、あの日、Sは確かに私の目の前に居たんだ、と思うとやっぱり泣いてしまうんだな・・・。