トコロ変われば事情も変わるもの。

MALENA2004-05-24

トイレのドアを「そーっと」開け、入り口で中の様子を窺う。
「もしかして、ツイてるかも!」と、一歩中に踏み込んだ瞬間、奥のトイレの
ドアが開き「ナマステ〜」の声と共に女性が登場。
「ひ、潜んでたんかい!?」時既に遅し・・・私は彼女に10ルピー札を手渡す。
取り敢えずの笑顔で「ナマステ」と言いながら。

日本では、パークハイアットだろうが東京タワーだろうが、トイレの使用料は
かからない(有料トイレと明記されたトイレは別として)しかし、トコロ変わ
れば、トイレに入るだけで使用料が発生してしまう国もあるのだ。

香港がそうだった。酒店(ホテル)やレストランのトイレに入ると、そこには
何故かオバサンが立っている。特に掃除をしている風でもない彼女は、トイレ
から出てきた人に対して、石鹸を渡し、蛇口を捻り、ペーパータオルを渡し、
クシャクシャにされたペーパータオルと、それらのサービスに対してのチップ
を受け取る。

当初は、正直「ウンザリ」した。蛇口くらいは自分で捻れるし、手なんか別に
拭かなくたって、どうって事ないのだ。
でも、待てよ・・・トイレに来る人にサービスする事が彼女達の仕事なんだ。
日本と同じに考えてはいけないのかも知れない。「郷に入りては郷に従え」
一々逆らっていたのでは、異国に於いて快適に過ごす事なんか出来やしないのだ!

インドのトイレも、香港と「ほぼ」同様のシステムだった。
「ほぼ」・・・インドでは観光地のどんなに「有り得ない」トイレであろうが
食事に立ち寄った片田舎のレストランのトイレであろうが、必ず彼女達の存在
があったのだった。彼女達の個性も様々だった。「二人で10ルピーだ」と言っても「一人10ルピーだ!」と、10ルピー払う迄入り口で「通せんぼ」するオバ
サンや、私に向かって「そんなの払う事ないよ!タダだよタダ!」と言った
見るからに裕福そうなインド人女性の目の届かない一番奥のトイレ迄勝手に私
を誘導し、私が扉を閉めようとした瞬間に、扉の隙間から不敵な微笑みと共に
手を差し出して来たオバサン。トイレの入り口で、10ルピー札を回収するだけ
で、サービスは一切無しだったオバサン。
全く「油断も隙もありゃしない」(笑)

インドのトイレには、何故か便器の横あたりに蛇口があり、やや大きめのコップのようなものが置いてある。最初は?と思ったが「地球の歩き方」に書いて
あった(笑)コレはインド式のウォシュレットだったのだ。試してはみなかったけれども・・・

冒頭の彼女は、私がトイレから出て来るとソープを手のひらに出してくれて
蛇口を捻り、ペーパータオルを手渡してくれた。彼女は使用済みのペーパー
タオルを、笑顔で私の手のひらから掴み取っていった。
正直言うと、やはり私はこの「習慣」に馴染めない。しかし、これが現実。
そこにはおそらく「いい」も「悪い」も存在しないのだ。

私が出口に向かうと、彼女は空かさず私の為に扉を開いてくれた。
そして、この「瞬間的訪問者」を笑顔で見送ってくれた。少々聞き取りづら
い「良い旅を」と言う言葉と共に。