早朝の土産物屋で彼は言う「これはいい。買え」と。

MALENA2004-05-30

早朝5時、インディラ・ガンディー国際空港の土産物屋で、私はCDを選んでいた。既に手にしている2枚はそれこそ「勘」で選んだもの。あと1枚を選びかねている私に対して、土産物屋の兄ちゃんは私に「2回目」のアドバイスをくれたのだった。アドバイスの内容は1回目と同じ「これは新しい映画のCDだ。すごくいいから買え」と。一回目のアドバイスの時は、唐突にアドバイスされた事もあり「あ、そう。でも、ちょっと他のCDも見たいし」と言って、全部で30枚程しかないCDやVCDやDVDの入った箱の中を「物色」したのだが、あと1枚が何故か選べない。「う、う〜ん・・・」と言って私は、暫し(と言っても5秒位だが)箱を見つめてしまった。すると、その兄ちゃんは私が見つめる箱の中から1枚の黄色いCDを取り出し、私の目の前に差し出しながら言った「これは新しい映画のCDだ。すごくいいから買え」と。今度は左手の親指を立てるポーズも加わり、1回目とは打って変わってアドバイスが自信に「満ち溢れて」いるようにさえ見える。「そんなにグットなのかい?このCDは?」そう訊く私に、兄ちゃんは言った「ベリィグットだ。新しい映画のCDだ。とにかくオススメだ」と。

おそらく、兄ちゃんはこの映画が好きなのだろう。もしかすると何回も映画館に足を運んで観たのかも知れない。その「良さ」をCDを通じて「最後の1枚を選べないでいる」一人のアジア人に伝えたかったのかも知れない。(兄ちゃんにとっては、そこ迄大袈裟なものでも無かったとは思うが・・・)
「わかった。アンタを信じる。コレ買うわ」そう言って私は、兄ちゃんの手からCDを受け取った。兄ちゃんは私に言った「新しい映画のだ。すごくいい」と。

CD3枚が決まると、次に私は雑誌をあれこれ手にしていた。雑誌を選ぶのはCDよりも全然簡単だ。それこそ「勘」で選ぶのみ。異国で買う雑誌のジャンルは、映画やファッション系と決まっている。表紙を見れば大方のジャンルは容易に判別出来る。立ち読みでも出来れば更に良かったのだが、一冊毎ビニール袋に包まれていたのでこれは無理。アイシュワリヤ・ライ(元ミス・ワールドにしてインドで人気の高い女優さん。その顔のパーツの造作と配置は、本当に溜息が出る程美しい!美しい顔は偉い!と心底思える稀有な顔だと思う)が表紙だった事に惹かれた映画雑誌と、ちょっとハイソそうな雰囲気の表紙が気になり選んだファッション雑誌。CD3枚と雑誌2冊、全部でUS$27(既に手持ちのインドルピーは20ルピーしか無かったので、US$しか使えそうな外貨が無かった)
CD1枚は日本円にして千円弱。決して安いとは言えないが、おそらく空港と言う場所柄故、そう言う値段の設定になっているのだと思われる。コレは仕方のない事なのであろう。

兄ちゃんは、CD3枚は別に紙袋に包んでくれて、雑誌2冊と一緒に黄緑色の余り丈夫そうとは言い難いビニール袋に入れ、私に渡してくれた「このCDはグットだ」と言いながら(笑)

3番ゲートは、7時10分発香港行きの國泰航空(キャセイパシフィック)に乗る人々でベンチは満席に近い状態だった。空港に着いた時は5時前だった事もあり、辺りは黒い闇に包まれていたが、3番ゲートから見える滑走路は、既に夜が明け柔らかい朝の空気に包まれているように見えた。インドに来た時よりは、少し荷物が増えたバックパックに、先程のCDと雑誌を大雑把に詰め込む。

程なくして、エコノミークラスの搭乗を案内するアナウンスが流れた。私は幾分重たくなったバックパックを背負い搭乗口に向かった。この空港には、今後も降り立つ事になるのだろうな、と言う思いも一緒に背負いながら。