そのプライドと友情は、あまりに切ない。

MALENA2004-06-13

週末のシネコンは、やはり人で溢れている。
デイ・アフター・トゥモロー」を観に来ている人が多いように見受けられる。そんな私は4番スクリーンへと向かう「シルミド」を観る為に。

私はどういう訳か、孤独な殺し屋やスナイパーや工作員が登場する映画を、好んで観る傾向があるらしい・・・

シルミド
オープニングの青瓦台襲撃事件と、主人公が鉄砲玉としてヤクザの結婚式会場に乗り込む場面が交差する映像にある種の緊張感を覚える。主人公を中心に、死刑宣告を受けた者や重罪を犯した者が、免罪を条件に対北特殊工作員になる為の訓練を受け、いざ任務遂行の場面迄は緊張感を伴って観られるのだが、その後一旦緊張感は途切れる。そしてラストに向かうにつれ再び緊張感が伴う。
工作員訓練の場面は、かなりの緊張感が伴う。訓練内容が壮絶極まりないのだ。そこ迄の訓練をしないと特殊工作員にはなれないのであろう。任務が突然取り消されてからの日々は少々「間延び」した感じがしないでもない。ラストは彼らに対する「抹殺」命令が下される事によって事態は悲しい結末を迎える。築かれていた筈の人間関係の崩壊、喪失感・・・名前も、その生きた証さえも闇から闇へと葬られようとしている事に対し、彼らは蜂起する。そのプライドと友情の全てを賭けて。それはあまりに切ない。

主演のソル・ギョング大杉漣に少し似ている気がする。劇中では、終止黒目が「哀しげ」だった。過去を背負った男の哀しさを「眼差し」一つで見事に演じきる演技力は凄いと言えるだろう。確か演技派俳優と言われていたか?
私的に気になる俳優はホ・ジュノ。実を言うと「火山高」を観た時からずっと気になっていたのだ、その「凄味満載」の雰囲気が。そう言った意味では、今回の教官役はハマリ役と言えるのかも知れない。私的にはこの人には孤独な殺し屋なんか演じて欲しいのだが・・・

アン・ソンギが自らのこめかみに銃口を当て引き金を引くシーンと、蜂起した彼らが、最後に自らが生きた証として自分の名前を叫びながら、自らの血でバスの中に名前を刻むシーンに涙してしまった。映画館で涙する女・・・手で涙を拭う事すらしない女・・・いや、泣いちゃいかん!とは思ってはいるのだが、いつもこうだ。悲しい場面に出くわすと。これは一生直る見込みは無いだろう・・・

涙してしまった理由は、おそらく「プライド」だろう。プライドを守り抜く為に、自らの命と引き換えにする。現在(いま)の私には無理。出来ない。この先もしもそう言う場面に出くわしたとしたらどうするだろう?自分のプライドを守り抜く事が、果たして私に出来るのだろうか・・・プライドだけでは生きては行けない。でも、プライドがなければ生きてる意味なんか無い、私にとっては。