歩き続ける勇気と、踏み止まる勇気と。そして、立ち続ける勇気と。

MALENA2004-07-23

先日「列車に乗った男」を観に行ったミニシアターのロビーにて「地雷を踏んだらサヨウナラ」の予告編のようなものが流れていた。「地球で最後のふたり」繋がりなのか、それとも次期に公開予定の「TAIZO」(ナレーションが坂口憲二)繋がりなのか定かではないが、この映画は観たいと思っていたものの、つい見逃してしまっていたいた映画だった事に気付く。そんなワケで、思い立って「TSUTAYA」にレンタルしに行く事となったのだった。

地雷を踏んだらサヨウナラ
一ノ瀬泰造が最期を迎えたカンボジアでの足跡を追った映画。カンボジア内戦下で一ノ瀬泰造が目にし、経験した様々な現実。戦場。友人の死。ベトナム人女性との儚い恋。友情。時折、一ノ瀬泰造の写真が登場する。幼気な瞳から今にも大粒の涙が零れ落ちそうな一枚の少女の写真が、内戦が「どう言うものなのか」を全て語っているようで、全身の細胞に痛みさえ憶える。一ノ瀬泰造が命懸けで見る事を切望したアンコールワット。彼なら、ファインダー越しにアンコールワットの「何」を見、そしてシャッターを切ったのだろう?カンボジアの大地に立ち続け、そして命を絶った一ノ瀬泰造。勇気と無鉄砲さは背中合わせだったのだろうか?

浅野忠信。笑顔も仕草も表情も、全てが自然体と言うか「演じていますっ!」的な「力み」が無くていいな、と。私的にはその「無国籍」な雰囲気が何ともカッコイイ!と思えてならない。劇中で、ベトナム人女性が一ノ瀬泰造に向かって言った台詞が印象的だった。
「自分勝手で、自由で。だからこそ応援したいと思うのかも知れない」
思わず激しく頷く自分!「そうそう!それ、凄ぉーーく解る!」と(笑)いや、実際「自分勝手で自由な人」を応援する事は、凄く、凄く、凄ぉーーく(笑)本当に「大変な事」だったりしますが(笑)
もう一つ印象的だった台詞。泰造の父が彼に言った言葉。
「自制する事も勇気」
これも激しく納得。私の場合は特に「歩き続けなければ」と思うタイプの人間故にこの言葉には心臓を抉られるような思いがしてならないのだ。歩幅が大きくなるにつれ「何か」を見過ごしながら急ぎ足で歩いている事は無いだろうか?「何か」を見過ごさないように、そこに踏み止まってみる事も時に必要なのではないだろうか?そして「何か」を見つけられる迄、一旦歩みを止めてそこに立ち続ける事も大切なのではないだろうか?前に進めない事は、或る意味恐い事かも知れない。でも、歩かない事を選択する勇気も「アリ」だと私は思う。いや、実際「勇気を出す」って言葉以上に大変な事なんだけどね・・・(笑)

ポル・ポト政権下では、知識人や富める人を中心に実に200万人もの人が虐殺されたそうだ。この200万と言う数字も実際のところ正確なものではないのかも知れない。何と言う事なのだろう・・・。映画「キリング・フィールド」もカンボジア内戦を描いているが、その中で主人公は自分自身の中で、自分の持つ知識を「黙殺」してまでも生き抜くと言う現実を決して放置しない姿が印象的だった。それ程までにこの内戦がカンボジアの人々に残した傷は大きいと言えるのかも知れない。極端に特異なイデオロギーが国家の基軸となっていたり、独裁者が君臨する国家は、その国の人々の精神そのものを著しく疲弊させ、やがて国家全体をも疲弊させるような気がしてならない。チャウシェスク時代のルーマニアのように、国民の力によってその独裁政権を崩壊へと導く事が出来た国家はいいが、そうでない国家も未だこの地球上に存在している筈だ。そんな国家がくれぐれも「血迷った」事だけはして欲しくないと願わずにはいられないのだが・・・。