その風は、大陸の匂いがした。

MALENA2004-08-15

成都行き中国国際航空452便は、入国審査の為に一旦北京空港に着陸する。
飛行機を一歩出ると「ただ強いだけ」の夏の陽射しが容赦なく照り付け、タラップを降りる私の頬を、熱風と呼ぶに相応しい風が包み込む。その風は、どこか懐かしささえ憶える「大陸の匂い」がした。

入国審査を終え21番ゲートの待合ベンチに座る私の耳に、(多分)成都への乗り継ぎ案内のアナウンスが入って来る。周りの人々も立ち上がり始めているから間違い無いようだ。私もバックパックを背負いゲートに向かう。北京空港には約1時間の滞在だった。故にこの数日間報道されていたサッカー関連の「殺気立った雰囲気」は、何一つ垣間見る事は無かった。成田から乗って来た飛行機に再度乗り込む。シャトルバスを降りタラップを上ると、やはり風は「大陸の匂い」がした。見上げた空は靄がかかったようにクリアでは無いにもかかわらず、相変わらずその陽射しは強い。北京からの乗客を乗せ、452便は四川省成都に向けて離陸する。飛行時間は約3時間半くらいか。

機内食を食べ終えた私の瞼は、どうやら生理現象!?を起こし閉じられてしまっていたようだった(笑)重たい着陸音(車輪が着地する時のドスンと言う音)で目が覚めると、そこは成都空港の滑走路だった。空港から一歩外へ出ると、今朝程迄感じていたような「外気」を感じる。気温は34度。そして湿度がもの凄く高い。そう、成都は蒸し暑いのだ。何だ・・・東京と変わらないじゃないか!(笑)成都が属する四川省は、中国大陸の西南地方に位置する。今は丁度雨季に当たるのだそうだ。中国に雨季とは少々意外な気もしたが、地図で確認をすると、四川省はインドやミャンマーから遠くない事からも雨季は有り得るのだろうと納得する。私自身、暑さや湿度の高さは気にならない。寒さは「何よりも」苦手だが・・・(笑)

夕食を終えると、私は早速ホテルの周辺を散策してみる。現地時間で午後8時過ぎにもかかわらず、見上げる空はまだ夕暮れ時のようにうっすらと太陽を残しているかのように明るい(因みに日本との時差は1時間)そして、外はまだまだ蒸し暑い。メインストリートから外れた通りを歩くと、そこには人々の当たり前の日常があった。皆それぞれに夕涼みを楽しんでいる。歩道の一角で麻雀卓を囲み、お喋りに花が咲きながらも手はこまめに動いている4人組。雑貨を扱う小さな店の店先で何やら楽しそうに騒ぐ男の子。お茶をする店(後で知ったが、お茶する店イコール主に『麻雀を楽しむ店』なのだそうだ)でお茶をする人。夕食をとる男女。パイプ椅子に腰掛け、気だるそうに私を見ながら団扇を仰ぐ太ったオバちゃん。上半身裸でボーッとするオジさん。小さな市場のような所で果物を買う女性。妖しげな灯りが見え隠れする店の前で、派手な化粧を施し大笑いしている女性(何の店だったのだろう・・・)「成人用品」と書かれた看板の何やら妖しげな店。信号無視する車。鳴り響くクラクション。私を含め!?信号無視で道路を横切る人々(信号無視しなければ道路すら横断出来ない!しかも細心の注意を払って!)そこには、当たり前の日常が当たり前の如く存在していた成都の夕暮れ。ふと空を見上げると、夕暮れは夜へとその空の色を変えていた。ゆっくりとした足取りで部屋へと戻り、私はゆっくりと煙草の煙を燻らせる。明日はいよいよチベットだ!と言う想いと共に。