今日が最後だと言う実感が何故か湧かない。

今日はこちらでの最終出勤日だった。
帰宅して今こうして日記を書いていても、どう言うワケか実感が湧いて来ないのは何故だろう?来週もいつもと何ら変わる事なく地下鉄に乗って出勤しそうに思えるのは何故だろう?

「廃棄」と書かれた紙が至る所に貼られている事務所。昨夜のうちにパソコンやコピー機や書類棚等が運び出され、やたらと広く感じる事務所に福岡から電話が入る。東京ではバタバタしていて、挨拶らしい挨拶も出来なかった先輩女性社員からだった。最初の1分は何とか会話が出来たものの、その後私はやっぱり泣いてしまい案の定言いたい事の三分の一も言う事が出来ず・・・。「頑張って下さい」と言うのが精一杯だった。彼女は新しい事業部宛に挨拶状を送ってくれると言った。私は彼女に手紙を書こうと思っている。今日は言いたい事が何も言えなかったから。

事務所を後にする時、先輩が言った「今日でここが閉鎖になるってどうしても実感が湧いて来ない」と。私も同じ気持ちだった。最後に扉が閉められ施錠された瞬間でさえも、最後だと言う実感が湧いて来ない。義務教育よりも長い年月通った事務所が入っているこのビル。本当に私はもうここに通う事がないのだろうか?不思議な気持ちだけが胸の奥底に去来する。

事務所の解散式(宴会)には、遠方からもたくさんの人が駆けつけてくれた。本当に有り難い事だと思う。集まってくれた人達の為にも、残る人間は今以上に仕事を頑張る事が何よりだろう。それは、今回去って行く人達にも言える事だと私は思う。宴会の席で私は泣かなかった。これから先仕事上でどんな困難があろうとも、決して自分に負ける事だけはしたくない。自分が泣く事によって、皆に不安のようなものを与えてしまうのが嫌だったのかも知れない。

今日迄の約一ヶ月半の間、私は一体どれくらいの涙を流してしまったのだろう。でも、今日迄流した涙は私にとって決して意味のないものでは無かった事だけは間違いなく言える。私自身、精神的に弱い部分もイヤと言うくらいに思い知った。でも、真剣に泣く事によって私は涙を流す意味のようなものを知ったようにも思う。来週からは東京での勤務が始まる。去って行く先輩達の為にも、私はこの先も決して無理する事なく自分のペースで仕事を頑張って行きたいと思う。そして、そう遠くない日彼女達とお互いに最高の笑顔で再会出来たらと思う。

例え実感が湧かなくても、私は今日と言う日を忘れる事はないだろう。