己の余りに単純な思考回路を恥じる。

給湯室でその人は素手で氷を掴んでグラスに入れていた。とても冷たそうな氷を、現在は私の取引先の人の為に。私は以前その人の事を「無愛想で気に入らない」と日記に書いた。その人が私の分のグラスまで用意している。素手で氷を掴むのは、指先が冷たくて辛いだろうに…。私は思わず交代を申し出る。その人は「いいですよ、やりますよ」と言う。私は咄嗟に製氷器の氷を指で掴みグラスに入れる。想像していた通りの冷たさ。これを3回もしようとしていたなんて…。「手冷たかったでしょ?指氷にくっつかなかった?」と言う私に彼は言う「大丈夫ですよ(私の分は)いいんですか?」と。私に対しては、確かに決して愛想がいいとは言えないかも知れない。でも、きっと性根は心優しいイイヤツなんだろうな、と思わずにはいられなかった。私は、そんな彼の事を「挨拶もロクにしない無愛想で気に食わない小僧」呼ばわりしてしまった…。嗚呼、私ってヤツは何て単純な思考回路の持ち主なんだろう!無愛想だから=気に食わない…。指先で感じた氷の冷たさは、私に無愛想≠気に食わない、と言う事を気付かせてくれた。給湯室を去って行く彼に私はお礼を言った。心の中で「ごめんなさい」と言いながら。