その石は、二つの顔を持つ。

MALENA2005-02-20

”自称”恋愛小説好きの蛙君が、半ば強引に「読んでみてください」と私の机にその本を置いた事が、この石を知るキッカケとなる。

蛙君が置いた本は、唯川恵の文庫本。タイトルは覚えていない。まぁ、通勤時間にでも読むとするか・・・。何てごくごく軽い気持ちで頁を捲る私の目に、とある石の名前が飛び込んで来る。「アレキサンドライト」何処かで耳にした事はあるけど・・・。一体どんな石だったかな・・・?

小説の中で、アレキサンドライトは「受ける光によって、その色が瞬時に変わる」みたいに書かれていた。青緑色から血のルビーの色へと。そして、アレキサンドライトの指輪をはめていた女性は、不慮の事故で突然この世を去る。「二つの顔を持つ石か・・・」最後の頁を捲り終えるや否や、私はアレキサンドライトに猛烈に興味を抱く事となり・・・。

一ヵ月後、私の左手にはアレキサンドライトの指輪がはめられていた(笑)
自然の光や蛍光灯の下では青緑色に輝き、オレンジ色の光の下では紫色に輝く。瞬時にその色を変える様が面白くて(笑)何度も自然光と人工光の間を行ったり来たり(笑)私が知らなかっただけで、世の中には面白いものがあるのねぇ、なんて思いながら。

でも、何故私はアレキサンドライトに魅かれたのだろう?
やはり、「二つの顔を持つ石」だからに違いない。微妙に色が変わるんじゃなくて、全く別の色に変わる。その、ちょっとコワイとさえ思える鮮やかさと言うか、大胆さとでも言うか。そして、心の奥底で、ごうごうと音をたてて燃える「もう一人の自分」の存在から目を背けるのは止めようと思ったからなのかも知れない。

普段、私は左手にはルビー、右手にはダイヤの指輪をはめている。
その「かたち」の中から、血の色の光を放つルビーと、何処までも透明で仄かに冷たい光を放つダイヤ。全く異なる「温度」の光を放つこの二つの石が私はとても好きだ(笑)両極端の光を放つ存在でありながら、その奥底に眠る光は同じ方向を向いている、とでも言うか。

そう言えば、やや暫くアレキサンドライトの指輪をはめていなかった事に気付く。あの瞬時に色が変わる様が見たくなって来た(笑)明日は、アレキサンドライトの指輪をして部屋を出よう。