角を一つ曲がる毎に迷宮度が増して行く

MALENA2005-06-02

まだ午前9時過ぎにもかかわらず、テヘランバザールは人で溢れ活気に満ちている。お菓子を売る店の軒先では「二木の菓子」に良く似たパフォーマンスが繰り広げられ、その横を「チェンジマネー、チェンジマネー」と繰り返し言いながら歩くちょっと怪しげ?な両替商のおにいちゃん。私の耳に怒涛の如く押し寄せて来る音たちに思わず胸が高鳴る。

バザールを歩いていると、一人の紳士が私たちに微笑みかける。日本から来たと言うと、彼はモスクに案内してくれると言う。取り敢えず彼の後を着いて行く事に。銀色に輝く水煙草の器具を売る店の角を曲がると、そこは「迷宮の入り口」の様相を呈している。更に鍋を売る店の角を曲がれば、もう既にそこは迷宮そのものだ。彼の足取りが速いので、一体角を何回曲がったのかも覚えられず、頭の中に「地図」を描くヒマもなく。

途中、彼は穏やかに微笑みながら私たちに名刺を見せながら言う。私は絨毯屋のオーナーなんですよ、と。え!?まさかこの紳士ったらモスクに案内するなんて言っておきながら、私たちを自分の絨毯屋に連れて行こうとしてるワケ!?もう何回目の角を曲がったのかも判らない角を曲がると、偶然と言うか何と言うかそこは絨毯屋が軒を連ねる一角。ちょっと、ちょっと、ちょっとぉーーっ!アタシゃ絨毯なんか(買いたくても)買えるワケないビンボー人なんだよう(泣)なんて心の奥底で叫んでいるうちに、絨毯屋が軒を連ねる一角は過ぎて行き・・・。え!?絨毯屋に案内・・・されるんじゃ・・・なかった・・・の・・・?

更に少し歩いたところで彼は足を止め振り返る。彼が指差す先には鮮やかな青色のタイルに彩られたモスクが。私たちをモスクの入り口迄案内し、ほら!キレイでしょ、と言うと彼は穏やかな笑顔で手を振りながら去って行った。彼はただただモスクを見せたくて私たちを案内してくれたのだ。それなのに彼を疑ってしまった自分・・・。モスクの鮮やかな青さがちょっと心に痛かった。

もう数え切れない程の角を迷路の如く曲がって来たので、勿論帰り道は判らない。もしやこのままバザールと言う名の迷宮で迷子?なんてワケにもいかないので、取り敢えず勘を頼りに光の見える場所に向かって真っ直ぐ歩いて行くと・・・。あれ!?この水煙草器具のお店があると言う事は・・・。もう早出口!?

来た時のそれこそ三分の一程の時間だった(笑)
バザールの中の通りを真っ直ぐに歩けば、モスクには五分程で辿り着くのだが、彼はきっと私たち旅行者にテヘランバザール独特の雰囲気を見て、感じて欲しくて敢えてぐるぐると遠回りしてくれたのだろう。彼の粋な計らいにまたしても感謝。バザールから一歩出て見上げた空が殊更青く感じたのは決して気のせいではないだろう。

ちょっぴり歩いたので、ジューススタンドで人参ジュースを飲んでみる。このお店、注文を受けてからオレンジやリンゴを手動の機械に押し込んでギューっと搾る。ただ人参だけはミキサーにかけていた。次から次へと注文が絶えないので、一人でお店を切り盛りしているおにいちゃん、手が壊れてしまうんじゃないかと言うくらいに忙しそうだった。因みに人参100%ジュースのお味はと言うと。それは甘くて、野菜なんだけどとってもフルーティでした!