その風は、どこまでも、そしてどこまでも穏やかだった

MALENA2005-08-13

眼下には黄土色と濃い緑色が入り混じる風景が広がる。
機体が高度を下げるにつれ、そこにはとても穏やかな風が吹いているようにさえ見える。

正午に成田を出発したカンボジア航空8541便(チャーター便)は、現地時間の午後四時過ぎ(日本との時差はマイナス二時間)シェムリアップ空港に到着する。通常であれば日本→カンボジア間に直行便は運行していない。タイかベトナムを経由するパターンが多い。直行便なら約五時間半でシェムリアップに到着する。シェムリアップ空港、タラップを降りるとシャトルバスではなく、徒歩でイミグレーションに向かうあたりが何とも「のどか」な光景だったりする(笑)

久し振りに降り立つ東南アジアの地。まだ軽いバックパックを背負いながら頬に受ける風は思っていた通り生暖かく、そして思っていた以上に穏やかだ。おそらく雨上がりだろうと思われる湿度の高い空気を感じながら、陽の光は感じるもののどんよりとした灰色の空を見上げながらフと思う「あれ!?・・・東京より涼しいじゃん!!!」と。

カンボジアは東京よりも涼しかった・・・。
何だか拍子抜けしてしまった程(笑)おそらく東京とは比べ物にならないくらい緑が多く、高層ビルも無く、アスファルトも極めて少ない(と言うか殆ど無い)為「人工的な暑さ」は感じないのだろう。そこにあるのは「自然な暑さ」だけ。人工的な暑さは時として人を不快な気持ちにさせるけれど、自然な暑さは決して人を不快な気持ちにさせないような気がする。

草を食む牛。道端でじゃれる二匹の自由な犬。四人乗りのバイク。クロマー(カンボジアのスカーフ)で顔を覆い自転車を漕ぐ女性。肉まんのショーケースを積んだ屋台の自転車。荷台にまでびっしりと人が乗ったトラック(乗り合いタクシー)国道6号線の路肩に立ち目にする風景はどこまでも穏やかに見える。そして、人々は勿論動物たちの眼差しにも険しさや棘棘しさのようなものは感じられない。どことなく穏やか。カンボジアの中でもシェムリアップと言う街は「例外的」に治安が良いんだそうだ。とは言えこの風景は十年程前迄内戦が絶える事がなかった国である事を一瞬忘れさせるくらいに穏やかだ。

おそらく実際のところは東京よりもカンボジアの方が気温も湿度(カンボジアは今雨季にあたるから尚の事だろう)も高いのだろう。でも不快感は全くない。むしろ心地いいとさえ感じる。汗をかいて肌がベタベタになろうが湿気で髪が膨らもうが化粧が崩れようが(笑)

自然であることは気持ちがいい。身体にも、そして精神(こころ)にも。