アプサラの手指は、美しく不自然に反り返る。

MALENA2005-08-17

その十本の指は、第二関節から不自然なくらいに「美しく」反り返っている。ゆったりと、そして優雅に動く指たちが一見不自然に見えるのには理由がある。アプサラ(天女、天使)はこの世に存在しないものだから。反り返った指は、この世に存在しないものの証として表現されるのだ。

ゆったりとした動きと、反り返った手指が印象的なカンボジアの民族舞踏「アプサラの踊り」ポル・ポト時代には踊りを教える先生や踊り子の多くが粛清の対象となったのだそうだ。辛うじて生き残った三人の先生はタイやインドネシアに逃れていたのだが、ポル・ポト時代が終わりを告げるとカンボジアに戻り再び「アプサラの踊り」を教えているのだそうだ。もしも三人の先生の命までもが絶たれていたら、こうして「アプサラの踊り」を観る事は出来なかったのかも知れない。優雅な踊りを観ながらも、この国では自国の伝統や文化までをも否定し破壊し尽くすような時代があったんだ、って事を改めて思う。

「アプサラの踊り」では、とにもかくにも”指の反り”が重要なんだそうで、どんなに顔が美しく綺麗でも、指の反りが美しくなければ「不細工〜!」と言われてしまうんだそうだ。全体的にゆったりとした動きで、手指は勿論の事、足の指の先に迄も神経が行き届いているのが判る。ゆったりとした動きの連続は、想像以上に全身の筋肉を使うので結構ハードだ。にもかかわらず、彼女たちは穏やかで優しい微笑みを決して絶やさない。もう、それは当に天女そのもの!!!

フと自分の手指を反らしてみれば。
む、むむむ・・・。!!!結構”イイ感じ”に反り返るではないか!!!
何とも惜しい!本格的に修行していれば、もしかしたら私も「天女」として舞台に立てたかも知れない!と鼻息も荒く言ってはみたものの・・・「微笑み」は何百万回練習しても「奇妙な笑顔」以上には進歩しなかったに違いない・・・(笑)「天女」は、誰にでもなれるものではないのだ(苦笑)