その微かな笑みは、崇高なエロスさえ孕んでいた

MALENA2005-08-23

数百年前から彼女たちはこの場所で微笑んでいる。そして、この先も変わる事なく微笑み続けるのだろう。

アンコール遺跡群の遺跡には、必ずと言っていい程彫刻が施されている。天国と地獄(結構リアル・・・)だったり、戦いの場面だったり、乳海攪拌だったり、神々の姿だったり。それらの彫刻の中で何故かとても気になって仕方がなかったのは、アプサラを描いた女性の彫刻だった。髪の毛を結い上げ、羽衣のような衣装を纏い微笑む彼女たち。遺跡の中でフと彼女たちと目が合うと、何故だかドキッとしてしまうくらいに、時として「妖艶さ」さえ孕んだ微かな笑み。

思えば、生まれて初めて私の心を「ざわざわ」させた微笑みは、子供の頃に見た「モナリザ」だった。「・・・この人・・・もしかしたらこの絵を描いた人の事好きだったんじゃないだろーか・・・!?」とトンチンカンさ加減も甚だしい妄想を抱く始末だ(笑)それ以来、私の中で「微笑み」と言う存在は何故か気になって仕方ないものとなる。

アンコールワットで出会ったアプサラの彫刻。よく見れば、何故か胸の部分”だけ”石の色が黒くなっている。理由は、昔も今も胸の部分を触る人が非常に多いんだそうで(笑)

歯が見えるくらいに思いっきり笑う「スマイル」も素敵だけれども、私は口角を静かに上げて笑う「微笑み」の方が好きだったりする。そう言えば私が思うところのアジアの笑顔ってスマイルよりも断然微笑みってイメージだなぁ。スマイルよりも断然微笑みに心惹かれる私の中には、やっぱりアジアの血が流れていると強く感じる。

雨上がりの遺跡で出会ったアプサラの像。
雨に濡れ微かな笑みを湛えたその顔は途方もなく妖艶だった。「崇高なエロス」を目にして、思わず私の足が止まったのは言うまでもない。