その楽園、私にとっては当に地獄

MALENA2005-08-25

シェムリアップの街から車で15分程走れば、アスファルトで舗装された道は赤土の道へと変わる。バスは土埃を舞い上げながらクバル・スピアン遺跡に向かいひた走る。

私は特に何とも思わなかったが、おそらく日本で言うところの悪路をバスは約二時間程走りクバル・スピアンの登山口に到着する。ここから遺跡迄は約40分山道を登らなければならない。思えば昨日も登ってばかり・・・。そして今日も朝から登山・・・。日頃の運動不足がちょっぴり恨めしかったのは言うまでもなく。

未だ午前中であるにもかかわらず、気温は既に35℃くらいだろうか。容赦なく照りつける南国の太陽と、湿度たっぷりの空気を浴びつついざ登山開始!運動不足気味ではあるものの、実は山に登るのは嫌いじゃない。むしろ好き。鳥の囀りや、自分の足が山道を一歩一歩踏み締めて行く音を耳にしながら山道を登る。何故だかとても気持ちがいい!

黙々と、そして淡々と山道を登っていると水の流れる音が聞こえて来た。頂上はもうすぐらしい。音のする方に向かって歩いて行くと目の前に小川が現れる。ここが水の中の遺跡、クバル・スピアンだった。約40分近くひたすら山道を登って来たので、水が放つ音たちは何とも言えない清涼感で溢れている。

蝉の鳴き声が何とも暑苦しい中を歩いていると、更に大きな水の音が聞こえる。音のする方へ歩いて行くとそこには滝があった。滝の側まで行くと、水の音たちは暑苦しい蝉の鳴き声を一瞬にしてかき消す。嗚呼〜何て気持ちがいいのだろう!・・・ん?・・・あれ?・・・私の周りを・・・ひらひらと・・・飛んでいる・・・無数の・・・蝶・・・。ぎ・・・ぎゃーーーーーっ!!!!!

モンシロ蝶に黄色い蝶。黒と黄色のアゲハに黒いアゲハ。掌くらいはありそうな黒に青色の斑点がある大きなアゲハ。無数の蝶が乱舞している。ひらひらと、いやバサバサと!狂気乱舞している!!!

それまで爽快だった筈の汗は、見る見るあぶら汗に変わる。
帽子を目深に被り、眩しくもないのにサングラスをかけ、サングラスから下の顔はタオルで覆う。って・・・アンタは強盗か・・・(泣)せめて水に触れたい。強盗紛いのいでたちで勇気を振り絞って水辺に向かうも、水辺に至っても無数の蝶たちが狂気乱舞しているではないか!(泣)ぎゃーーーーっ!!!それこそ滝のように流れ出すあぶら汗と共に、私が滝の側から走り去ったのは言うまでもなく・・・。

アンコールワットも、元はと言えばフランス人の蝶の研究家がジャングルで蝶を追っていて迷い込んだ時に発見されたと聞く。おそらくカンボジアは蝶の種類も多いのだろう。この大地は蝶の楽園なのかも知れない。中でもクバル・スピアンの滝は無数の蝶たちが狂気乱舞するくらい楽園そのものなのかも知れないが、私にとっては当に地獄絵図だったワケで・・・(苦笑)