遺跡を飲み込む木

MALENA2005-08-26

怖いと言うよりは神秘的。

タ・プローム遺跡の榕樹(ようじゅ)を目にした瞬間に思う。遺跡の中に強烈な存在感を誇示しながら点在する木々たち。その光景はまるで大蛇が遺跡を飲み込んでいる最中のようでもあり、ドロドロと柔らかい物体が遺跡を溶かしているようでもあり、巨大な恐竜の足が遺跡を掴んでいるようにも見える。シトシトとおとなしい雨が降るタ・プロームの遺跡。生温かく緩やかに吹く風と、シトシトと降る雨の音が木々たちの存在を益々神秘的なものにしているような気がしてならない。

タ・プローム遺跡では、その方が赴きがあるからかどうかは定かではないが、これらの木々を敢えて切らないのだそうだ。遺跡を押し潰し、飲み込まんとする木々。木々に押し潰され、飲み込まれそうな遺跡。木々の生命力と遺跡の存在感。生命力と存在感。この二つの存在があるからこそ、私の目にはそれらが神秘的なものとして映るのかも知れない。

榕樹に気をとられがちだったが、タ・プローム遺跡は彫刻も密かに素敵だと言う事に気付く。特にアプサラの微笑みはどこまでも穏やかで優しく美しく、そして神秘的だった。

タ・プローム遺跡には神秘的な何かが散りばめられていた。