ジャングルにそっと佇む遺跡

MALENA2005-09-06

前日、現地の旅行会社から渡された紙にはこう書かれてあった。

「ベンメリア遺跡周辺は日本大使館より、個人での観光は避けるようにとの注意喚起が出されている地域になります。なお、遺跡周辺及び遺跡内は、まだ完全に地雷の撤去がされておりません」と。

アンコール・ワットを中心に急速に観光地化が進められているとは言え、未だ地雷の撤去がされていない地域も存在する。これがカンボジアの現実なのかも知れない。赤土の道の両側に広がる景色に目を遣りながらフとそんな事を考える。それでも、バスの窓から眺めるカンボジアの日常は、私の目にはどこまでも穏やかに映る。

シェムリアップを出発してから約二時間程でベンメリアに到着する。
観光客の姿は殆ど見られない。静かでいいや、と思う。この遺跡は発見されてからも修復はされておらず、崩壊した箇所や真っ暗な回廊を歩いたりするらしい。なので、遺跡に入ると同時にカンボジア人の「お助け隊」が数人同行してくれる事となる。にもかかわらず・・・私は遺跡に入るや否や「やらかして」しまったのだ・・・。やや傾斜のある板は、雨と苔で滑りやすくなっていたらしく、足を滑らせた私は思い切りお尻を強打する事となる。嗚呼・・・情けないったら・・・。

ジャングルの中にひっそりと佇むベンメリア遺跡。
遺跡全体が緑色の苔に覆われ、回廊は光の気配を感じないくらいに重い闇に包まれていた。崩壊した遺跡の一部は石の塊となりジャングルの片隅にそっと放置されたままだ。

ベンメリア遺跡は、遺跡の発見時に最も近い状態で残っているのだろう。
そこには他の遺跡では決して目にする事のない光景が繰り広げられ、他の遺跡では感じる事のない時間と空気が流れていた。