唐突も無く甦る遠い記憶

「何でまた・・・今そんな事を思い出すワケ!?」

その時の行動や状態とは全くかけ離れている事柄なんかを、どう言うワケかフと思い出す事がよくあり、正直自分でも困惑してしまう事がよくある・・・。

移動中の電車内。唐突に学生時代のクリスマス礼拝の光景が浮かぶ。クリスマス礼拝の事は、ここ数年思い出す事もなかったのに不思議だ。

全学生(全員女子)が講堂に集まり、各自キャンドルを手にし、順に後ろの人にキャンドルの炎を灯して行く。薄暗い講堂内には静かに揺れるたくさんのオレンジ色の小さな光と、静かに、そして深く響き渡るパイプオルガンの音色と賛美歌。その光景は、毎年地元のテレビ局が取材に来るほど美しい光景だった。が、しかし・・・その美しい空間に身を置きながらも私はフと思ってしまうのだ、今ここで火事になったら大変だ・・・と。何て不謹慎な・・・礼拝中だと言うのに。

不謹慎?礼拝?・・・はて?何かイヤな記憶が甦りそうな予感が・・・。

学生生活最後(私は短大だったので2年生)の12月の或る日。友人が私の姿を見つけるや否やこう言う「ちょっと、アンタの学籍番号が掲示板に貼り出されてたよ。学生課から呼び出しだよ!」と。ま、まさか単位が足りない!?いや、そんなワケは断じて無い。卒業出来る最低単位プラス2単位のラインは死守していたから。首を傾げながら学生課に赴き呼び出しの理由を訊ねると・・・「礼拝の出席回数(年間最低20回)に満たないどころか、6回しか出ていない」と言われ・・・「今月中に市内の教会に礼拝に行ってレポートを提出するように」と・・・。

私の通っていた学校は、1講目と2講目の間に礼拝の時間が設けられており、学生は最低でも年間20回以上は礼拝に出席しなければならない「決まり」があったのだ。朝一の講義は極力選択しないようにしていた事も良くなかったのだろう。他にも、学食でお茶なんかしててうっかり忘れてしまったとか、地下にあるロッカーに聖書と賛美歌の本を取りに行くのがちょっぴりおっくうだったり、とか・・・。嗚呼、何て不謹慎な・・・。

レポート提出期限3日前。この3日間の間に日曜日はもうない・・・。でも、レポートは提出しなければならない・・・。そう、とにもかくにも書くしか術はないのだ。筆記用具を原稿用紙の一マス目に持ってくる。頭の中で教会をイメージしてみる。が、ヘタな描写は致命傷になる。違う系の特徴を書いてしまい兼ねない危険性がある。むぅぅ・・・ならば教会の描写はボヤカシて書くしかない。

今となっては、どのような内容のレポートを書いたのかは記憶が相当曖昧になってしまっているが、「祈り」と言う言葉を軸に400字詰原稿用紙2枚を「埋めた」ような気がする。「人は何故祈るのか」「私にとっての祈りとは」みたいな事柄を罪悪感を伴いながら書いた記憶が・・・。描写の部分は想像、感想の部分は或る意味真実。でも、嗚呼・・・神よ許し給え・・・。

フと気が付けば、電車内はすっかり「懺悔の部屋」となっていたのだった・・・。