カイマルクの地下都市

MALENA2006-10-09

低く身を屈めなければ進む事すら出来ない通路。篭りきって冷たく滞留したままの空気。何とも言えない圧迫感。

陽の光が射し込む事のないカイマルクの地下都市は、一種奇妙な空気とでも言うか閉塞感を漂わせていた。地下都市と言う事もあり、ここは夏でも気温が15℃前後と涼しく、長袖を着ていた私もつーんとした肌寒さを感じるほどだった。

迫害から逃れる為にキリスト教徒が住んでいたカイマルクの地下都市には、礼拝堂を始め台所や通気溝などさまざまな施設や設備が完備されていたらしい。当時の人々は現在よりも小柄だった事もあり、通路の幅が狭く天井が低いんだそうだが、やや閉所恐怖症の気がある私としては、この暗くて狭い通路に恐怖感のようなものを感じてしまう。「うぅぅ・・・一刻も早くここから出たい・・・」と。

今でこそ観光地として随所に電球が灯されている地下都市だが、当時の人々は油を燃すとか、蝋燭によって灯りを得ていたのだろうか。朝日も、夕陽も、風も、雨も、月明かりも感じる事のない日常。朝日の眩しさや夕陽の傾きによって刻を知る事もなく、風の音や雨粒が地面を打つ音を耳にする事もない。彼等はどうやって時間や季節を知っていたのだろう。いや、それよりも彼等にとって大切なものは信仰心だったに違いない。強い信仰心こそが、地下都市での日々を生きる糧となっていたのだろう。

地下都市から地上に出た瞬間、容赦なく照りつける夏の太陽が、何故かとても愛しく感じてならなかった。

こうして書いていてフと思い出した事がある。
週末ともなれば、カーテンを閉め切った部屋で、時間の感覚もないままに空腹感を感じれば食べ物を口にし、身体を重ね、そして眠る。カーテンの向こう側が暗いと感じて「じゃあね」と部屋を後にしていたあの頃。今思えば、そこには信仰心のように確固とした思いのようなものが無かったから破綻したんでしょうな・・・(苦笑)