海の匂いが混じった風

MALENA2006-12-07

陽が傾き始めた那覇の街を私は黙々と歩く。
横断歩道を渡る。
学校の横を通り過ぎる。
公園を通り過ぎる。左手には寺院と思しき建物が見える。
ただただ歩く。「海はこっち。多分」そう心の中で呟きながら。

「まちぐぁー」をフラフラしていると、不意に夕陽が見たくなる。
時計を見ると午後5時半少し前。よし!海に落ちる夕陽を見に行こう。

で、海ってどっち?
自分がこっちだって思った方。多分。きっと。

バスかタクシーにでも乗っちゃえば?
いや、乗り物には乗らない。自分の足で行く。

何故歩く?
歩きたいから。

”多分こっちが海”だと思う道を黙々と歩く。
そうして現れた道路標識には若狭海岸は直進と標されていた。どうやら私の”多分こっち”は当たっていたようだ(笑)

程なくして遠くに海が見えた。先程よりも陽は更に傾いていた。少しだけ急ぎ足になる。小さかった海がだんだんと大きくなって来る。海の匂いが混じった風が吹く。

大きな道路を渡ると、金網越しに海が見えた。夕陽を見る為に橋の上迄更に歩く。濃いオレンジ色をした太陽が東シナ海に飲み込まれ始めていた。晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、風の日も、嵐の日も、雪も日も、太陽は東の空から昇り、そして西の空に沈む。その光景は当たり前の日常なんだけれども、今こうして橋の上から見ている夕焼けの空の色が身体中に染み込むように思えて来るのはどうしてなんだろう?

何となく泣きたいような、でも笑いたいような不思議な気持ちになる。
橋の上には、海の匂いが混じった風が吹いていた。