それは、お清めの雨だったのかも知れない

MALENA2006-12-12

沖縄の遺跡や地名の中には、一部分もしくは全部が漢字読みの訓読みにも音読みにも当てはまらない沖縄固有の読み方をするものが結構あったりする。「玉陵→たまうどぅん」もそうだし、「今帰仁→なきじん」なんかもそうだ。

「せいふぁうたき」と聞いてどんな漢字を思い浮かべるだろう?先ず「ふぁ」に当てはまる漢字がなかなか思い付かないんじゃないだろうか。ふぁ・・・華?それって中国語でしょ(笑)

正解は「斎場御嶽
世界遺産でもある斎場御嶽に到着した頃から、それ迄青かった空が急に灰色がかった雲を帯び、にわかに雨粒が不規則なリズムで落ちて来はじめた。ここに来る迄の道すがらガイドさんが久高島の話をしてくれて、その話が私的には猛烈に興味津々だっただけに、この急激な空模様の変化に身体中の細胞がざわざわとし始める。

斎場御嶽は、琉球王国最高の聖地として国王も参拝した神聖な場所なんだそうだ。現在でも沖縄の人々の信仰の対象になっているらしく、私が訪れた時も10人程の人たちと参拝ルートで擦れ違う。辺りは鬱蒼とした木々たちに囲まれ、まるでそれらによってこの場所が守られているかのような厳粛な空気が漂っている。二箇所ほど大きな岩の前で手を合わせ、大きな岩のトンネルのようなところを潜るとそこが三庫理(さんぐーい)と呼ばれる神域だった。因みにこの場所だが、勘の強い人の中にはそこに存在する気のようなものに圧倒されて足を踏み入れる事が出来ない人もいるんだそうだ。

三庫理からは久高島が見えた。遠い昔人々は船に乗って久高島に参拝していたそうなのだが、いろいろとリスクが伴うと言う事もあり、久高島から土を運んだりして久高島を望むこの場所が聖地となったんだそうだ。

不思議な事に斎場御嶽には雨が降っているのに、久高島のあたりには晴れている。何でもこの辺り一帯が雨でも久高島だけは晴れている事は良くある事なんだそうで。久高島、一度訪れてみたい場所だ。

斎場御嶽を後にし車に乗った途端、スコールさながらの激しい雨がフロントガラスを叩く。ほんの10秒前まで辺りは静かだったのに、今は雨がアスファルトを叩く音だけが響く。単なる偶然と言ってしまえばそれ迄だけど、私的にはもう凄く凄く不思議な光景で仕方なかった。

車で5分も走ると、スコールのような雨は追いかけては来なかった。そして、その辺り一帯に雨が降った形跡はなかった。雨が降っていたのは斎場御嶽周辺だけだったのか・・・。ガイドさんは言う「きっと、お清めの雨だったんですね」と。お清め・・・か・・・。思えば、秋の真ん中あたりから終わりくらい迄にかけて心が酷くどろどろと荒んでいたモンな・・・。今の雨でどろどろとしたものが流されて行ったのかも知れないな・・・。

何となく、身体がほーっと軽くなったような気がした。そして、何となく涙が出そうになった。フロントガラスの向こうには半分夜の色をした空が広がっていた。