深く力強い歌声

今日は本来ならば御室仁和寺での朝のお勤めの事を書こうと思っていたのだが、「Dr.コトー診療所2006」の主題歌を歌う中島みゆきの歌声がずーっと気になっていた事が書きたくなってしまった。

正直言うと、子供の頃は中島みゆきのあのちょっぴり鼻にかかったような響きのある歌声が好きではなかった記憶がある。歌も♪みぃちぃにぃたおぉれぇてぇだぁれぇかぁのぉなをぉ〜、よぉびぃつぅづぅけたぁこぉとがあぁりぃますぅかぁ〜♪(道に倒れて誰かの名を呼び続けた事がありますか)の歌詞に「えぇーっ!?・・・」と思ってしまったし・・・。

その後ヒットした「悪女」も歌詞しか好きじゃなかったし。高校時代はユーミン派だった私は中島みゆきの歌を聴く事はなかったのだが、数年の月日が流れたある日、野島伸司ドラマ「家なき子」の主題歌「空と君のあいだに」の中島みゆきの歌声を聴いて、昔とは違った意味で「えぇーっ!?・・・」となる。力強くて深い歌声。歌詞も曲調も聴いているうちに何だか涙が出そうな感じで。

その後、NHKの「プロジェクトX」の主題歌だった「地上の星」も聴いているうちに涙が出そうな歌で。

そして、「Dr.コトー診療所2006」の主題歌「銀の龍の背に乗って」を歌う中島みゆきの歌声はより深みを増し、力強さは空に向かって一つの迷いもなく伸びる樹木のようで。全ての哀しみや痛みを包み込んでしまうような歌声にはやはり涙が出てしまう。本当に今更だけど中島みゆきって凄い。

Dr.コトー診療所2006」を見ていて、奇跡の48才時任三郎の他にも別な意味で気になってしまった人がいる。それは、フとした瞬間に見せる表情が”本当に”悲しげな吉岡秀隆。役どころとは言え、悲しい過去を背負った一人の人間を演じるには十分過ぎるほどの悲しい表情。こんな表情を「演技臭」を漂わせる事なく演じる事の出来る吉岡秀隆って凄いかも。って、吉岡秀隆って素が「悲しい系」の顔だったっけ!?

余談だが。
これ迄生きて来ていろいろな人を見て来たけれども、悲しい時に本当の意味で悲しい表情の人は、その人自身が本当の意味での悲しみや痛みを経験し、その事を辛くてもきちんと受け止めて来たんじゃないかと思う。だからこそ、そう言う人は他人の悲しみや痛みが分かるから他人に対して優しいんじゃないかと。私は、「悲しそうな」表情で誤魔化そうとしている人は悲しいかな直ぐに見抜いてしまう。そう言う人は声は泣いているように聞こえるけれども涙が出ていない。本当のところは悲しくないから涙が出ないんだろうな、きっと。

人生は経験が全てだ、と私は思っている。
経験はただ待っているだけではやって来ない。自分から経験しに行かないとダメなのだ。悲しいかな命は永遠じゃない。もしかしたら明日終ってしまうかも知れない。だったら少しでも多くの経験をして、それをどこかで何らかのかたちでお返しする事が出来たら、と思う。