静かにひっそりと咲く桜の花

MALENA2007-01-18

思えば、日本に限らず遠い昔からその土地や場所なんかに伝わる「不思議」ってどうして「七つ」と言われている事が多いのだろう?所謂「七不思議」と言うやつだ。

知恩院にも七不思議があるんだそうで、「鶯張りの廊下」「白木の棺」「忘れ傘」「抜け雀」「三方正面真向きの猫」「瓜生石」「大杓子」がそれで、この中で「瓜生石」と「忘れ傘」以外は全て非公開となっている為目にする事が出来ない。ただし、本堂裏の渡り廊下に紹介コーナーがあるので、写真は目にする事が出来る。むぅぅ、「三方正面真向きの猫」”どこから見ても見る人を正面からにらんでいます”の説明の通り、確かに右端から見ても左端から見ても目が合うから不思議だ。

知恩院龍安寺同様外国人の拝観者が多いのだろうか。パンフレットには英語も併記されており、
鶯張りの廊下はNightingale hallway
白木の棺はWhite wooden coffins
忘れ傘はLeft umbrella
抜け雀はFlown away sparrows
三方正面真向きの猫はCat looking in three directions
瓜生石はSquash stone
大杓子はLarge wooden scoop

と訳されていた。日本語の繊細で微妙なニュアンスみたいなものを外国語に訳するのってムズカシイものなんですね・・・。

御影堂と阿弥陀堂の間の敷地の桜の木にはひっそりと花が咲いていた。
余りにもひっそりと咲いているので、危うく見過ごしてしまうところだったが、そのひっそりとだけれども強く咲いている桜の花にフと気付けば引き寄せられていたような気がする。冬に咲く桜の花はどこか寂しそうなんだけれども、凛とした佇まいでそこに咲いていた。

木々や草花はやがて訪れる春に備え冬の間は緩やかで静かな眠りに就く。空の色も陽の光も薄く、空気も風も、そして大地も冷たい冬と言う季節に植物たちは静かに耐えるからこそ、春にはそれぞれに美しい色を湛える事が出来るのだろう。木々は葉を、草花は花びらを失うからこそまた葉や花びらを得る事が出来るのだろう。

失う痛みを経て得たものこそ自分が心から得たいと思っていたものなのかも知れない、と冬桜を見ながらフと思った。