穏やかで優しい伏目がちな目

MALENA2007-06-04

長い睫毛の伏目がちな目。
馬の目はとても優しいけれども、ヨナグニウマは更に優しい目をしている。

東崎(あがりざき)の辺りでも牛やヨナグニウマがのんびりと草を食む姿を見る事が出来る。しかも、凄い間近で。

東崎の駐車場で車に乗ろうとした時、フと前方を見ればたくさんのヨナグニウマが草を食んでいるのが見えるではないか!

うわあぁーーーっ!近くで見たいっ!!!
そろそろと車を動かして、ヨナグニウマの近くで静かに車を停め、そろそろと車の外に出て、何気にヨナグニウマに近付く。

子供の頃、遠い親戚がやっている田舎の牧場で馬の鼻筋を撫でた時、耳がピンと立って忙しなく動いているのを見て、「馬って大きいのに気が小さいのかな」と思いながら、馬の口ばかりを見ながら(顔をじーっと見たら草を食べてくれないかも、と思い)草をあげた事がある。それ以来馬は繊細で神経質だと思っていたので、ヨナグニウマにもヘンなストレスを与えちゃいかん!と思いそろそろモードで接近したのだが、ヨナグニウマはアヤシイ動きの旅人を少しも気にする事なく黙々と草を食んでいる。

あ・・・あれぇ・・・!?手の届くところ迄近付いても、ヨナグニウマは相変わらず黙々と草を食んでいて・・・。何でだろ?与那国島の温暖な気候や穏やかな空気のせいなのだろうか。此処で暮らすヨナグニウマたちはとても穏やかで優しい目をしている。

写真を撮ったり草を食む音を録ったりしていると、仔馬が伏目がちにトコトコとこちらに駆け寄って来る。その後を大人の馬がやはり伏目がちにトコトコと着いて来る。

私のすぐ近くで暫し草を食んだ仔馬と大人の馬たちは、やがて私の横を通り過ぎて東崎の方へ向かってトコトコと歩いて行った。

穏やかで静かで、でも強さを、優しさを秘めた野生。

強くなければ優しくはなれないし、優しくなければ強くはなれない。

中途半端な強さは誰かを傷付け、中途半端な優しさでは誰かを幸せには出来ない。

うわべだけの強さや優しさは、誰の事も決して幸せにはしないんだよね。

一際風が強く吹く東崎に向かってトコトコと歩いて行くヨナグニウマの後姿を見ながら、私はぼんやりとそんな事を考えていた。