与那国空港迄の道を歩く

MALENA2007-07-09

西レンタカーさんに二日間お世話になった車を返却し、空港へは徒歩で向かう事にする。「空港迄送りますよ」と言うおじさんに「折角だから自分の足で与那国島の道を歩いて空港に行きたい」と言うと、おじさんは「それもいいかも知れないね」と私を見送ってくれた。

与那国島に来た時より一寸だけ重たくなったリュックを背負い、何処からともなくジージーと虫の声が聴こえて来る道を歩く。農作業に勤しむ人。道端に咲くハイビスカス。歩道迄迫り出している濃い緑色をした大きな葉っぱの植物。少しだけ曇った空。ヒラヒラと飛ぶ黒いアゲハ蝶。水分の多い暖かい空気。フと足を止めれば風の音が聴こえる。

それはおそらく、よく在る日常の一コマ。でも、現在(いま)の私にとって、それはおそらく”かけがえのない”一コマ。

歩き始めて程なくして一台の軽トラックが止まった。若いお兄さんが穏やかな笑顔で「どこまで行きますか?」と声をかけてくれた。「空港迄折角なんで歩いて行きます」と言うと「あ、そうなんですか。気を付けて」と言いながら穏やかな笑顔でお兄さんは去って行った。

最初から最後まで、与那国島はとにかくとことん温かかった。
東京を発った時にはスカスカでささくれ立った心は、南の島で穏やかな気持ちで満たされ癒された。

空港迄の道を歩きながら思う。やっぱり人生って旅なんだよな、と。
行き先と道順を決めるのは自分自身だし、その道を歩くのは自分自身の足。この二年余り、正直言うと大きく道を見失った事もあれば、ぐるぐると道に迷った事もある。堂々巡りを繰り返し道を外れ黒い森の中を彷徨い続けた事もある。来た道に戻れるよう友人たちが手を差し伸べてくれたからこそ、私はこうして与那国島で空港迄の道を歩けている。

空港迄の道を一歩進む度一歩前は過去になり、一歩踏み出す瞬間から未来が続く。一秒前も10年前も同じく過去で、一秒後も10年後も同じく未来だ。そして、現在(いま)がなければ過去も未来も存在しない。

月並みな言い方だけれども、今日一日一日を大切に生きなきゃな、と思いながら空港迄の道を歩く私がいた。