船上は「プチ地獄絵図」と化す

MALENA2008-04-04

「うぅぅ・・・一体これは何の”罰ゲーム”で・・・」

父島「とびうお桟橋」を出航して約1時間半。聟島列島のシルエットがぼんやりと見え始め出した太平洋上。ドッシャーン!と絶え間なく頭から浴びる、いや、かぶる苦味すら感じるくらいに塩辛い海水。容赦なく次々に盛り上がる波を、それこそ乗り越えて上下左右に乱高下!?しながら聟島を目指すクルーザーで、私の眼差しは虚ろになりかけていた・・・。

と、取り敢えず顔を拭きたい・・・。
乱高下するクルーザーで掴まり立ちしながら椅子のあるスペースに向かって進む。顔を拭く為に椅子の横にあるタオルに手をかけた瞬間・・・。

な、何か・・・い、胃袋が・・・喉の辺りまで・・・迫って来てるような・・・気が・・・する・・・ような・・・。

奇妙な感覚の原因が何かを特定する前に、結論は出てしまった・・・。
突然堪えきれない衝動と共に「リバース」乗り物でリバースなんて、小学生の時の摩周湖以来だよ・・・(泣)

二日前の聟島コースは、余りの海況の悪さに途中で引き返したらしい。今日は二日前ほどではないものの、やはり海況は悪く「行けるところ迄行ってみよう」と言う決死の!?船出だったのだ。なので、出航後約10分で目が虚ろになる者が現れ、父島の島影が見えなくなる頃には数人が海に向かって「撒き餌状態(リバース)」になり、グロッキー度合いが加速し血の気のない顔で椅子に横たわる者が現れた頃には、乗客の約8割がリバースと言う「プチ地獄絵図」が繰り広げられていたのだった。

そんな状況にあって、自分は結構「持ち堪えて」いた方だったのだが、結果として2回リバースしてしまう。冬の太平洋、そして時化の大海原、恐るべし!!!

大海原に向かってリバースしていたら、突発的にクルーザーの波飛沫に巻き込まれてしまったのか、大口開いて猛烈ビックリ顔で跳ねるトビウオと目が合った瞬間、グロッキーに傾きつつある気持ちが吹っ切れたような気がした。

「だって、自然には抗えないからさね」

洋上に吹く冷たい北風、温かい西風。次々に波が大きく盛り上がり、うねり、時化る海。水平線の先から始まる灰色がかった空。全てが今ここにある自然。

移動もままならず、ましてや写真を撮れる状況ではない船上。虚ろだった眼差しは、猛烈な勢いで虚ろさを振り払い”ここにある自然”を確認し始めていた。