半年前の風の匂いの記憶

MALENA2008-10-27

約半年ほど前の春の日。
私は、がらんとなった部屋で一人ぼんやりと春の風の匂いをかいでいた。

殺風景な部屋とは裏腹に、流れ込む風はふんわりと暖かく、穏やかで、そして優しい。だからなのか、一瞬何とも言えない切なさが込み上げて来たのを憶えている。

あの日から約半年。
風が冷たくなる度に「何でアタシはこんなに風が冷たいところに居るんだろ・・・」と、東京を離れた事をジリジリと後悔し始めている自分がいるワケです・・・。

今思えば、吐気がする程人が多くて、空気も汚くて、ゴキブリわんさかな東京だったけれども、それらを払拭出来るくらいの「刺激的なこと」が、街に日常にゴロゴロしていた。東京は退屈とは無縁の街だった。

数年だったけれども、刺激的なことがゴロゴロしている街で生活してしまうと、中途半端に都会でも田舎でもなく、刺激的なことも東京に比べ格段に少ない退屈な街札幌に戻って来ると、もう、それこそ耐えられない感情に苛まれてしまったワケです、自分の場合。

札幌には昔からの友人もいるし、実家もある。生まれ育った街には違いないんだけれども・・・凄く大好きな人がいたとしても、でも、やっぱり、耐えられないんだよなぁ・・・。

そう考えると、毎日毎日結構苦しいワケです。
刺激的は「無いもの」として日々生きて行くしかないのか・・・。
いや、それとも日常の何気ないひとコマに刺激的を見出すべくアンテナを張り巡らせ生きて行くべき、なのか・・・。

そもそも、何で自分は札幌に戻って来ちゃったんだろ・・・。

小笠原の旅の続きや東京での出来事が書けないのは、札幌での現状と比較して、いろいろな意味で苦しくなりそうだから書かないんだと思う・・・。いや、でも、もしかしたら敢えて書く事によって気持ちの整理が出来たりするのか・・・。

もう、ワケわかんないや・・・。

東京で暮らした部屋を出る時、不意に何もない部屋をカメラに収めていた事を思い出した。がらんとした部屋でかいだ春の風の匂いの記憶がフと甦り、ちょっとだけ泣けた。